なるほど 豆知識

R2.8月号  「コロナ予防に今こそ、口腔ケア!歯周病治療で重症化を防止!」記事提供:安元重実(やすもと歯科医院)

 7月16日、宇部市の20代の女性が新たに新型コロナウイルスに感染し、山口県内での感染確認は5月5日以来、71日ぶりの確認となりました。翌日17日には、ユーチューバー「へずまりゅう」による迷惑行為で新たな感染者が出るなど予期せぬ感染リスクが潜んでいることも分かりました。
 持病をお持ちの方、高齢者の方は別として、一般の人にとって通常は重篤な状態になる可能性は低いものと考えられますが、感染には気を付けなければなりませんし、知らないうちに感染して周囲の人に感染させないように注意を払う必要があります。
 いつ自分が感染してもおかしくない状況では、まずは3蜜を守る。重篤化しないように免疫力を高めたり、感染しにくいようにマスクの着用や頻繁な手洗いが重要です。
 重篤化を防ぐためには、実は、それ以上に口腔ケアを意識することが大切です。
 今回は、国立感染症研究所で歯科部長の勤務経験がある鶴見大学・花田信弘教授の解説をもとに豆知識を書きました。
 まず、インフルエンザウイルスでの話ですが、
インフルエンザウイルスが人の細胞に侵入するとき、タンパク分解酵素であるプロテアーゼが必要になります。口腔内の細菌がプロテアーゼを持っているので、インフルエンザウイルスの侵入を助けてしまいます。そのため、口腔ケアをすることによって、ウイルスの感染を防ぐことが出来るということになります。
 また、インフルエンザウイルス感染してしまった際は、感染拡大に作用するノイラミニダーゼという酵素が必要になります。ノイラミニダーゼも口腔細菌が分泌するため、口腔ケアをすることによって、インフルエンザウイルスが細胞から次の細胞に移ることを軽減させることができます。
 そのため、口腔ケアを行うことでインフルエンザウイルスの感染も防げるし、重症化も防ぐことができます。

歯みがきが、新型コロナウイルスの重症化を防止する理由
花田信弘教授よると
 ウイルス感染には「ウイルス単独で発症」「ウイルスと細菌が混合感染して発症」「いったんウイルス感染が治まった後、二次的に細菌性の肺炎を起こす」という3パターンがあるそうです。これは、1950年代にインフルエンザの解析をして出された見解です。今回の新型コロナウイルスも、この3パターンが当てはまっていると考えられるということです。
 ウイルス単独の場合は、それほど自覚症状はないけれども、細菌との混合感染や、細菌性の二次的な肺炎によって重症化したり、亡くなったりしている。そして、重症化で問題になっている免疫の暴走・サイトカインストームの起爆剤になっているのは、歯周病菌の菌体成分であるLPS(エンドトキシン)ということです。

 歯を磨かないでいるとLPSが血中に入り、この状態をエンドトキシン血症と言います(図1)。また、エンドトキシン血症は歯を磨くと回復していきます(図2)。そして、LPSはすぐに肺に到達してしまうので、サイトカインストームにつながるというわけです。
(歯磨きの癖で、ブラシが当たっていないところがあると、そこはずっと磨けていないことになります。毎日磨いているからと安易に安心はしないでください。)



※実験は24歳の健康的な若者で行われました。歯みがきを行わないことで、エンドトキシン血症が56%の確率で発症していることが分かります。このことから歯周組織が弱っている高齢者が適切な歯みがきを行わないと、さらに発症率は上がると考えられます。



※歯みがきを3週間行わないことで、血中エンドトキシンが0.74EU/mlに上昇しました。これは、ほとんど腎臓病のレベルです。その後、歯科衛生士による歯のクリーニングを行い、3週間歯みがきを行うことで、正常に戻りました。

 このエンドトキシンが、どこから来ているのかが分かるのが歯肉炎指数です。歯みがき中止の際に、1.16まで上がっていることから、歯肉炎からエンドトキシンが入ってきているといえます。

歯周病を防止することで、重症化リスクを軽減できる。
 日本疫学会が発表していますが、新型コロナウイルスでは敗血症が死亡リスクにつながっているということです。
そのため、これらの症状のきっかけになる歯周病菌を含むグラム陰性菌のLPSを止めることが、新型コロナウイルスによる死亡リスクを軽減させる対策となってきます。
 そしてLPSの出どころは歯肉炎です。新型コロナウイルスとは長い付き合いになっていくことでしょうから、歯肉炎を改善させるということが重要になっていきます。

新型コロナウイルスとの共存に入っていく中で、重要になってくること
 それはもう、虫歯と歯周病にならないことです。よく歯を磨いてください。(花田信弘教授)
インフルエンザウイルス感染症でもそうですが、怖いのは「細菌との混合感染」と「ウイルス感染が終わった後の二次的な細菌性肺炎」です。
 基本的にウイルスは、宿主である人間を殺すということはありません。打撃を与えるということはあるかもしれませんが、宿主を殺してしまったら自分も行き場がなくなってしまいますからね。
 では何が人間を死に追いやってしまうのかというと、細菌側が殺しているんです。だから細菌性肺炎が怖いですし、その細菌性肺炎の中でもグラム陰性菌のLPSによるサイトカインストームが非常に重要になっています。
 それを防ぐためには、細菌の内毒素・LPSを血液中にいれてはいけない。そのためには、穴のある虫歯はふさぐ、歯肉炎があって出血しているのであれば治療してください。虫歯や歯肉炎のない人は、予防的な歯みがきに努めてください。

【まとめ】

口腔ケアとウイルス感染症予防
●インフルエンザウイルスからの予防、インフルエンザの重症化防止に口腔ケアは有効です。
●歯みがきで新型コロナウイルスの感染を防止することはできません。しかし、重症化を防止することは可能です。

新型コロナウイルス感染の重症化を防止
●歯周病菌の菌体成分であるLPS(エンドトキシン)が、免疫の暴走・サイトカインストームの起爆剤になっています。
●LPSの出所は歯肉炎のため、歯肉炎を改善することで新型コロナウイルスによる死亡リスクを軽減させることが可能です。

 以上のことから、感染症を悪化させないためには口腔ケアが重要であることが分かりました。新型コロナウイルスとは共存の時代に入ってきます。
 今回は記述しませんが、歯周病菌が体の他の臓器にも悪い影響を与えています。丁寧なセルフケア、そして、虫歯、歯周病の治療を行い、重症化を防止できるようにしましょう。










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